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これからのエンタメ
”ドライブイン”コンサートの作り方

2020年7月、コロナ禍で仙台でもコンサートやライブが軒並み中止、オンライン配信へと切り替わる中、感染症対策を取りつつもリアルな場での演奏会にこだわった「ドライブインコンサート」が開催されました。

仙台で初めての試みとなった本コンサートがどのように生まれたのか。

発起人でピアニストの高橋麻子さん、音響で携わった紺野司さん、コンサート会場となった仙台ヒルズホテルの八十出明さんの3名に、新しいコンサート形式のノウハウと、これからのエンタメのヒントを伺いました。

≪企画のきっかけ≫

ドライブインコンサートを企画した経緯を教えてください。

高橋:
元々、私自身コロナ禍以前から5月に演奏会を計画していて、チラシも配布し終わり、チケット販売もはじまっていたのですが、周囲で企画されていたコンサートもどんどん開催キャンセルとなっていく状況でした。私の企画した演奏会も、強行して進めて直前でキャンセルになったら迷惑がかかるし、実施できたとしても、来場された方が会場で感染してしまったり、来る途中で何かあったら……など、色々考えるとやらない方が良いのではという結論に達していました。

世の中が演奏会をどんどんオンラインで配信するようになってきている中、このままコロナがいつまで続くのが見えない中で、オンラインで演奏するのが通常になってしまったらどうするの?と怖さを感じていました。

「ホールで演奏会はできないけれど、ホールではない場所でできないだろうか」そう考えている時に、公益財団法人仙台市市民文化事業団(以下、文化事業団)が多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業(以下、支援事業)をはじめられ、相談したんです。

私の中にも、いろいろ企画のアイディアがありました。同時に、感染防止対策に関してもいろいろと想像を膨らませていて、会場の入り口で酸素ボンベや医療防護服を渡すとか、小さなテントを張ってその中で見てもらうとか……(笑)。

アイディアの中で、野外での演奏会を車の中で聴くという「ドライブインコンサート」の海外での実施例を見て、これの縮小版のイメージはどうだろうと相談すると、文化事業団からは、1回で終わらせずに3回のミニコンサートにして、次やる人たちにそのノウハウを伝えるとより良いのでは、とアドバイスいただきました。

それから、音響のお仕事をされている紺野さんを知人からご紹介していただいたんです。

高橋麻子さん(ピアニスト)

紺野さんは既に岩沼で映画を上映する「ドライブインシアター」の実績がおありだったんですね。

紺野:
はい。ドライブインでコンサートやライブ、シアターを楽しむ「ドライブインエンタメ」というジャンルです。
コロナ禍で人が集まったとしても何もできない中、私の周りには何か楽しいことをやりたいというチームがありました。

名取に仙台PITがあった時、そこでドライブインシアターをやったことを覚えていた人がいて、「車の中で観るのはまさにソーシャルディスタンスだ。これを参考にうちらでも実現してみようか」ということで、岩沼でのドライブインシアターが実現しました。最初は関係者のみの集客でしたが、Facebookで拡散したところ、イベントを企画している人から「うちもやりたい」という声や、音響屋さんから「どういうシステムでやっているのか」といった問い合わせが多く寄せられて、みんな興味があるんだという実感がありました。そんな時に、高橋さんからもご連絡をいただきました。

紺野 司さん(音響、イベント企画・運営)

高橋:
紺野さんにご相談すると、「できると思いますよ」って感じだったので、まずは大丈夫かなと(笑)。
次は場所。私の父が仙台ヒルズホテルの八十出さんと知り合いだったこともあり、ホテルの駐車場を会場にしたいと八十出さんにご相談したものの、ホテルだし難しいだろうなとびくびくしていたら、「やるんだったら大々的にやりましょう!」と心強いお返事が。

駐車場でのコンサートはこれまでに前例がないかと思います。ホテル内でのイベント、コンサートはこれまでにおありでしたか。

八十出:
ホテル内の会場をお貸しした例は多々ありますが、駐車場を利用したイベントは初めてでした。コンサートや歌謡ショーなどは収容人数が開催条件の大きな要件になってきますので、お客様の希望するイベントがホテルの会場で実施可能であれば、これまでもお応えしてきました。

コロナのこのような状況で高橋さんからご相談をいただいて、うちとしても経験はありませんでしたが、「やってよかったね」と言っていただけるようにしましょうというのが、ホテルのスタンスです。高橋さんにも何かあったらどんどん言ってください、とお伝えしました。

八十出 明さん(仙台ヒルズホテル&ゴルフ倶楽部 ホテルセールスマネージャー)

今回のドライブインコンサートのチケット価格は、約一時間半の公演で1枚3,500円。クラシックのコンサートとしてはリーズナブルな印象ですが、一公演約2時間半のポップスのライブに行き慣れている方からすると、若干高い印象を持ちました。

高橋:
演奏時間の割に高いかな、ということですね。せんくら(仙台クラシックフェスティバル)の通常の演奏会は一人1,000~2,000円で、今回は車に乗る人数が1人でも7人でも3,500円です。今回は、家族単位で楽しんでいただくことが前提。曲目も小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまでが楽しめる内容にしたので、家族のイベントとして来ていただけるなら安いかなと思います。

≪ファミリーで楽しめる構成の作り方≫

計3回のライブは、曲目も出演者も毎回変わっていました。コンサートの構成はどのように決めていかれたのでしょうか。

高橋:
コンサート企画当初は、支援事業として採択が受けられるかどうかまだ決まっていなかったので、普段から一緒に演奏会をさせて頂いている仙台フィルメンバーを中心に、信頼を寄せている演奏家たちに声をかけたところ、コロナ禍ということもあり、皆の予定も一致しました。

7月の第1回は、ヴァイオリンと私(ピアノ)のデュオを企画しました。2020年はベートーヴェン生誕250年。本来はベートーヴェンの曲がさまざまな演奏会で沢山演奏される年になるはずでしたが、そういった機会が軒並み中止になる中で、第1回は、ベートーヴェンの月光ソナタを演奏しました。

「月光が泣けた」という声が多かったようですね。

高橋:
私の中では、空にお月様が出ていて、その月明かりの中で月光を演奏するという想定があったのですが、当日はあいにく雨……(笑)。

8月の第2回、9月の第3回と、回を重ねる毎に演奏者が多くなりましたね。

高橋:
9月の第3回は、弦楽四重奏と合唱。フリーランスの音楽家たちに演奏の機会を分配することを考えると、なるべく多くの演奏家が参加できるようにするために、ピアノ伴奏ではなく、私がほぼ全曲を編曲し、弦楽四重奏の形にしました。

第3回の見せ場の一つといえば、子どもたちの合唱。コロナ禍で合唱の現状はどうでしょうか。

高橋:
子どもたちの合唱を披露する機会は減っています。練習は続けていましたが、常にマスクをした状態。リハーサルも一緒にはできなかったので、子どもたちのリハでは、弦楽だけのリハーサルを録音したものをスピーカーから出して、それと共に練習してもらいました。本来合唱は空気をたくさん吸い込んで歌うもの。それが制限されている今、子どもたちに野外で思いっきり酸素を取り入れて歌うことをやってほしかったんです。

≪音響・会場設計のノウハウ≫

ドライブインコンサートの重要な要素である、音響。クラシックの屋外コンサートということで、どんな課題があるのでしょうか。

紺野:
(ドライブイン)シアターであればありものの音楽を、ポップスなどのライブでもスピーカーから音を出しているので、問題なく実施できます。
一方で、クラシックは生音が命。通常のホールコンサートでは、反響音や客席の環境も含めて音作りをしているものを、屋外で、しかもスピーカーを通してどう伝えるかというのが苦労した点です。

屋外での音響設計の方法を具体的に教えてください。

紺野:
大きく分けて、3つの方法があります。

(1)音をスピーカーのみで流す
(2)音をエフエム周波数に飛ばして流す
(3)音をWi-fiで飛ばす

(1)は、一番基本的な音響で、ポップスなどの屋外ライブの多くはこの方法です。
(2)は、膨大な数のトランスミッターが必要で、狭い範囲で中継してやらないと電波法の違反になってしまう上、膨大なコストがかかります。
今一番実現性が高いのが、(3)のWi-Fiで飛ばす方法です。

Wi-Fiだとハイレゾ音源を飛ばしてスピーカーから出力することができます。これだと②のような違法の危険性もなく、車が100台でも200台でも対応できます。
ただ、MCの音声はWi-Fiでは飛ばせないため、MC音声はスピーカーから、映画の音声はハイレゾ音源を流すイメージです。それぞれで長所短所があるので、私自身もまだ手探りでやっている状況です。

(1)(2)(3)それぞれの最適な設計シーンは?

紺野:
クラシック以外のコンサートやライブなら(1)のスピーカーで音を流すのが良いですね。クラシックのような生音なら(3)のWi-Fiを使うパターン。シアターや、プレゼンテーションなどにも(3)は問題ないかと思います。また、(3)のWi-Fiで飛ばした音源を(1)のスピーカーで出力する併せ技パターンもあります。ただ、音の遅れは出てくるのでジャンルに合わせてですね。

第2回、第3回と演者がどんどん増えていく中で、マイクの数やスピーカーの配置はどのように変えていったのでしょうか?

紺野:
合唱は普通のライブと同じなので、(1)のスピーカーから流すパターンです。ただ、スピーカーから離れてしまうと音が遅れて聴こえます。というのも、音は電気信号上は0コンマ何秒の世界なので距離による違いはあまりないのですが、音は空気振動で伝わるので、人数が増え、それぞれがスピーカーから離れれば離れるほど音が遅れて聞こえてしまいます。そのために、音を返すモニタースピーカーが必要になるんです。合唱のように人数が多くなる場合は、観客側と出演者側の音の環境の作り方はそれぞれに必要になってくるかもしれません。

第3回の合唱をした子どもたちは17名。一人ずつマイクはありましたが、モニタースピーカーはありませんでした。感覚を頼りに歌ってくれたのでしょうか?

高橋:
テンポ通りに歌ってくれたら合うはずなのですが、子どもたちが立っていたスロープで聴いたら、複数のスピーカーからの音が聞こえました。それでどちらのスピーカーの音に合わせるのか迷いながら歌っていたようです。

複数名離れて歌う時、音が遅れて聞こえる対処法として、モニタースピーカーを置く以外の方法はありますか?

紺野:
今の所はモニタースピーカーを置くしかないですね。スピーカーを置くだけならそこまでコストはかかりませんが、マイクが近いので、スピーカーだけだとハウリングを起こしてしまいます。そこに付随するイコライザーやアンプなどいろいろなものが付いてくる。それぞれにチューニング(音調整)などが必要なので、機材面でも技術面でもコストはかかりますね。

2020年は中止となってしまいましたが、定禅寺ストリートジャズフェスティバルでは例年ゴスペルのステージなどがあります。今回の合唱よりもさらに複数人の場合、コストを抑えるには、物理的に距離をとる、マスクをつけて歌うなどしか現実的にはないのでしょうか。

紺野:
何をするかによるところが大きいですが、今回のドライブインコンサートのようなものなら、それが一番現実的ですね。
昨年のジャズフェスは、リアルなイベント実施がなくなった代わりに、ライブエイド(配信)がありました。映像の配信となると、画角に収まるように出演者を配置しなければならない。そうなるとソーシャルディスタンスはどうなるの?という課題も出てきて。ライブエイドでは、マイクに一回毎にカバーをかけていました。カバーを変えるにしても、素手ではなく毎回ゴム手袋をしていました。演奏者の中には、自身でマイクを加工して感染対策をしている方もいらっしゃいました。

ドライブインコンサート当日、出演者の方からは、屋外コンサートならではの違和感や演奏しづらさなどの声はありましたか?

高橋:
全然ありませんでした。私もピアノを弾きましたが、何の違和感もなく。屋外なので天候の不安はありますね。風が強くて楽譜が飛びそうだったり、雨だと鍵盤が湿ってくるなどはありました。

八十出:
会場後方は、音量をもう少し上げてもいいかなと感じました。

紺野:
そうするとサイドのスピーカーに近い方がうるさく感じてしまうんです。そうならないようにするには、スピーカーの数を増やして会場全体で聞こえるようにするか、Wi-Fiかエフエム波で飛ばして車の中で楽しんでもらうか。Wi-Fiだとハイレゾ音源だからいいんですが、エフエム波だと音質が下がってしまうので、クラシックには向いていないかなと思います。

会場設計について伺います。仙台ヒルズホテルの駐車場の環境をご覧になって、どのようなところをチェックしましたか?

紺野:
まずは、駐車場に車が何台入れられて、どういう風に見せられるかということをチェックしました。
これまでにドライブインシアターをいくつかやってみて、ステージの高さや奥行きの計算がやっとできるようになってきたところでした。シアターで会場に車100台を入れるとした場合、スクリーン幅が8〜10メートルで、地上から5メートルくらいの高さに設置するのが最適です。

スクリーンなら平面で前に出ているので問題ないんですが、ステージだと奥行きもあるので、そこをどうクリアするかが難しい。このスクリーン関係やステージが、主催者として経費が莫大にかかる部分です。スクリーンがなくても壁などに映し出せる環境であれば問題ないのですが、全く何もない広場でやるとなると、トラスステージ(足場を一から組むステージ)にスクリーン作らなければならないので、最低でも数百万円かかります。

映像を映し出すプロジェクターも、弊社でやる時は自前を持ち込みできるのでコストは減らせますが、普通の映像会社さんに頼んだら、プロジェクターの一日使用料(明るさ1万ルーメンのものの場合)だけでも30〜40万はかかるでしょう。安価にやるのであれば、ステージやその代わりになるものがある場所で、映像も映し出すところがあれば、コストは削減できます。

≪駐車場のオペレーション≫

コンサート当日、車の誘導がとてもスムーズでした!

八十出:
試行錯誤が多かったんですが、回数を重ねる毎に慣れましたね(笑)。
ホテル正面駐車場は、ご宿泊、お食事、フィットネス、ゴルフ場などを利用するお客様がお車を停めています。車は100台入るんですが、ソーシャルディスタンスを考えると、半分の50台が限度と紺野さんからアドバイスをいただきました。ホテルにいらっしゃるお客様と、コンサートにいらっしゃるお客様、どちらも立てなければならない。我々も誘導しやすいように、駐車場に引いている既存のラインをどのように使うかを考えました。
また、コンサート予約の時点で、お客様がどういうお車に乗っていらっしゃるか、車高を調べておきました。駐車場係の人に渡しておき、大型の車がきたら後ろの方に駐めてもらおうなどの打ち合わせはしていました。

コンサート当日は、ホテルスタッフ7名とボランティアスタッフ3名で誘導しました。コンサート会場の駐車場の誘導のほか、ホテルのお客様の流れも考える必要があるので、要所にホテルスタッフが立ちました。幸か不幸か、1〜2回目の開催日は雨で、ゴルフ場にいらっしゃるお客様は少なかったです。9月の第3回は少し苦労しました。4連休の中日で宿泊のお客様も多く、ライブのお客様にも迷惑をかけないように気遣いました。

コンサート終了後のお帰りもみなさんとても早かったですね。

八十出:
ホテル前の交差点で、直進車と左折車が多かったのが起因していたようでした。

紺野:
他のドライブインエンタメでも早いですよ。ホールとかだと終わった後余韻に浸りたいからか会場に残っていたりするけれど、車だとすっと帰っちゃう。

撤収が早いのは、運営側としてはありがたいのでは(笑)。感染対策の面でも、時代に合っていますね。

≪演出の醍醐味≫

コンサート後半は日が暮れて、照明が映えましたね。照明はどのように行なっていましたか。

紺野:
明るくする位で、過度な演出はしていません。例えば、第1回のベートーベンの月光の演奏の時は、青みがかったライトを入れたりはしていました。

高橋:
第3回の最後は暗くなってしまって、子どもたちの顔が見えなくなってしまったのは残念。それだったらキャンドルを持って歌うとか、もう少しエンターテイメントとして演出してあげられたら良かったですね。

紺野:
夜のイベントは、照明での演出が醍醐味ですね。ドイツでやっているドライブインライブですと、道路の真ん中にステージを作り、ステージではレーザービーム使ったり、DJが演奏したりみたいなものもある。それはそれで楽しいですよね。

それだけコストはかかりますね(笑)?

紺野:
最近だとLEDライトがあるので、昔ほどはかからなくなりました。昔はライトを使えば使うだけ発電機が必要だったんですが、今はごく小型の発電機で済んだり、その辺は取り入れやすくなってきています。

演奏後のお客さんのリアクションとして、(車の)「パッシング」で応えるというのは高橋さんのアイディアでしょうか。

紺野:
パッシングはドライブインエンタメの醍醐味なんです。
通常は、スタンディングオベーションや拍手ですが、車中だとコールアンドレスポンスができないので、その代わりにパッシング。クラクションは違法になるので緊急時にしか鳴らせませんし、パッシングの明かりは夜だと映えます。ドライブインシアターに来たっていう感覚が味わえて、お客さんにとっても楽しみになります。

高橋:
ステージから見ていると、おぉ〜という感じでした。

八十出:
パッシングのように、音に対して音で答えるのではなく、静かに聴いて光で反応するというのが、クラシックのお客様の層に合っている感じがしました。

お客様から寄せられた感想の中には、お菓子を持参して食べながら聴いたというのもありましたね。

高橋:
アイディアとして、レストランとのコラボ商品ができないかなと思い、これも八十出さんにご相談しました。

八十出:
ホテルのレストランで特別コラボメニューとしてピザを提供しました。当初はテイクアウト形式でお客様のお車までお届けする予定でおりましたが、お飲み物、ピザ容器、お手拭などをお持ちして、車内の限られたスペースでお召し上がり頂くより、レストランにお越し頂いた方がゆっくりして頂けると思い、レストランでの提供としました。

紺野:
車から出るとなると、ソーシャルディスタンスどうなるんだろう?というのもお客さんからするとありますしね。今後私の企画では、ドライブインシアターの本場のアメリカ的な演出で、スタッフの女の子がポップコーン等のスナックをローラースケートで運んで来てくれるというのをやってみたい。保健所の課題とかクリアしていきたいですね。

ご宿泊のお客様からの感想、反応はありましたか。

八十出:
入場料を払ってお車で聴いている方がメインのお客様なので、こちらから積極的にアナウンスはしませんでしたが、音が聞こえて立ち止まって聴いていかれる方もいらっしゃいました。

高橋:
天気の心配はずっとありました。第1回、2回は小雨。第3回もぎりぎりまで雨だったので晴れて来て良かったです。

紺野:
逆に言えば、ドライブインコンサートって雨が降っていても楽しめるんですよね。

≪これからドライブインエンタメを考えている人へ≫

高橋さんにとっても、仙台でも、初の試みのドライブインコンサートでした。企画してみていかがでしょうか。

高橋:
自分がこれまでに企画してきたホールでの演奏会に比べると、内容もファミリー向けですし、お客さんの層もこれまでにクラシックの演奏会に来たことがない方も多くいらっしゃったと思いますので、全く違うイベントなんだなという感じですね。
演奏会の前日に必ずお客様全員にメールをしていたんです。お天気が心配なので、窓から吹き込む雨を想定して、「窓辺におくタオルを用意してきてくださいね」とか。そういうやりとりがあったからこそ、終了後にお会いしたことがない方からお礼や感想のメールをいただいたのは嬉しかったですね。

今回、仙台のクラシックコンサートの中でも行きやすいせんくらのイベントなどにも行ったことがない方がご家族でいらして、車中で食べたり飲んだりしながら聴いたり、寝転んで聴いたという方もいらっしゃいました。車中で何をしていただいても構わず楽しめるのは、これも一つのスタイルということで、今後定着していったら面白いかなと思います。
一方で、ドライブインコンサートを実施するにはすごくお金がかかります。自費ですべてやるのは現実的ではありません。もう少し簡易にできるのか、協力企業を見つけるのか、何かの方法がプラスされる必要がありますね。

音響・会場設計の観点ではいかがでしょう。

紺野:
会場設計でいうと、ドライブインシアターの入場料の相場が、車1台あたり約5,000円〜8,000円。100台集まったところで80万。プロジェクターに50万、スクリーン200万必要と考えると採算が取れません。それでもやりたいという方がいれば、会場にスクリーンやステージとして使えるものがあるとコストを抑えられると思います。実際、岩沼でのドライブインシアターでは、仙台バスの建物を使って映像を写しました。

音響面でいうと、クラシックの音響は、普通聞こえないような高音域の繊細な音もミックスして聞こえさせる必要があります。クラシックを楽しむ方は耳が肥えている方が多い。歌がないところに自分で絵を想い描いて楽しむような音楽なので、現実に引き戻されてしまうような音だとお金を払う価値がなくなってしまう。その辺りを満足させるために音作りをしなければならないなという緊張感がありますね。一方で、音響は最低限頑張りつつ、パッシングでコールアンドレスポンスを楽しんだり、テイクアウトを楽しんだりとこれまでのホールコンサートではできない楽しみ方があると思います。

ホテルの駐車場での実施を踏まえ、会場選びの観点でのアドバイスはありますか。

八十出:
今後も屋外でのコンサートやイベントが増えていくかと思いますが、会場探しは大変だと思います。音を大きく出せるところだと郊外になりますが、お手洗いがありませんよね。そういう面では、ホテルの近辺であればパブリックのお手洗いが使えるのでいいかもしれませんね。また、クラシックというジャンルがホテルに合っていたと思います。近隣も商業施設で一角だけ住宅地。ここには事前に町内会にご挨拶はしていて、「もしご迷惑かけるようでしたらご容赦ください」と伝えたら、「それは楽しみだ。俺も行くよ!」と言っていただけたり。周りとの関係性も大事ですね。

私たち会場提供側としては、一般のお客様の駐車場と、コンサートのお客様の駐車場への誘導がスムーズにいくのであれば実施に大きな問題はありませんでした。ノウハウがあったというより、コロナ禍に負けないで何とか実施しようという高橋さんの情熱があったからこそ開催できたと思っておりますし、仙台で初めての野外コンサートを当ホテルで実施できたことを嬉しく思っております。これからも多くのお問合せに応えていきたいと考えております。

高橋:
周りを巻き込んでいくと、誰かが助けてくださる。今回も技術的な部分で紺野さんをはじめ、皆様が支えてくださいましたし、素晴らしい会場を提供してくださった仙台ヒルズホテルさんもいらっしゃいました。そうして少しずつ組み立てていくとうまくいくのではないでしょうか。

掲載日 2021年03月18日 取材月 2021年09月

八十出 明(仙台ヒルズホテル&ゴルフ倶楽部 ホテルセールスマネージャー)、高橋 麻子(ピアニスト)、紺野 司(音響、イベント企画・運営)

ドライブインコンサート 制作インタビュー

企画・取材・構成 奥口文結(FOLK GLOCALWORKS)、濱田直樹(株式会社KUNK)

このインタビューは、「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」の助成事業実施者に文化芸術活動や新型コロナウイルス感染症の影響等について伺ったものです。

当日は、身体的距離確保やマスク着用などの新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、取材を行いました。写真撮影時には、マスクを外して撮影している場合があります。