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ライブハウスの奮闘
配信ライブとの向き合い方

仙台MACANA店長 佐藤岳史さん

現在、コロナウィルス感染拡大の影響を大きく受けている場所の一つに、ライブハウスがあります。
ライブの中止や移動制限に伴う来場者数の著しい減少は、ライブハウスの場所そのものは勿論、そこで文化の発信をするアーティストの活動も奪っています。
今や無視できない「配信ライブ」について、仙台のライブハウス「MACANA」の店長 佐藤岳史さんに伺いました。

≪ライブハウス、コロナ禍前後の状況≫

2020年1〜3月。仙台ではまだコロナウィルス感染拡大の実感がない中、MACANAはどのような状況でしたか?

ライブの延期や中止がはじまったのが、2020年2月末辺りです。従来であれば、ひと月のうち25日くらいは会場が稼働していましたが、3月時点でライブの頻度がひと月の半分位にまで減っていました。

やばい状況だなとは思っていましたが、「まぁ、1〜2ヶ月したら落ち着くだろう」という気持ちでいたんです。それがまさかこんなに長引くとは思っていませんでした。

正直、東日本大震災の時より酷いですね。震災の時は、一番はじめに底辺に落ちてそこから這い上がるしかなかったんですが、今はゴールのない道をずーっと歩いているような感じで、いつまで続くのかな、って。この状況が長引けば長引くほどライブハウスにとっては厳しくなっていくと思います。

2020年4月以降、緊急事態宣言後の状況は?

最後に会場にお客さんを入れてライブを実施したのは、3月30日。それ以降、有観客ライブの開催数は一旦ゼロになりました。

例年5月は夏フェス解禁の時期。MACANAでは県外アーティストのライブも多く実施していて、例年楽曲のリリースがフェス前後に固まるんですが、それが全部無くなったような感じでした。

それでも、5月の時点では「延期すればできるでしょう」という感じでスケジュールを回していました。今は延期の延期、または中止が続いている状況です。

緊急事態宣言が解除された2020年6〜7月、仙台では、オンラインライブが各地で行われつつ、人数を最小限に絞った有観客ライブも戻り始めた時期。MACANAではいかがでしたか?

仰る通りの状況でしたね。6月に、各ライブハウス合同で宮城県の村井知事に陳情に行き、ライブハウスとしてこういう指針でやっていきたいというお話はさせていただきました。

6月中旬から少しずつお客さんを会場に入れ、会場は定員上限50名+配信ライブの形で実施しました。今も変わらずの状況が続いています。

MACANAのスタッフの方々の配役は?

音響1人、照明1人、システム操作1人に、僕がカメラをやりながらイベント制作もしています。ライブやアーティストとのスケジュール調整は、基本的にスタッフ3人でやっています。コロナ禍でリスケジュールが多くてもこの体制です。

ライブハウスらしく、ドラムペダルを活用したアルコール消毒

ライブハウスにおいて、世間の風潮と実情のギャップは感じますか?

コロナ感染拡大初期は、「ライブハウスは感染リスクが高い場所だ」という風潮があったと思うんです。実際は、MACANAは地下にありますが、換気システムが設計上しっかりしています。それに加え、転換前に扉を開けて換気もしています。

お客さんには観覧する時にしっかり距離を取っていただいていますし、収容人数も50人までと制限しています。マスク着用はもちろん、声も出さないで頂いています。

十分対策をした上で感染者が出るのは防げないこと。万が一、感染者が出てしまった時、対策はどのようなものをお考えですか?

お客さんに事前に、みやぎお知らせコロナアプリ「MICA」に登録していただくので、万が一の時は、お客様と出演者全員を追えるような体制にしています。会場に関しては、宮城県のガイドラインに従って消毒等の対応を取ります。

全国的にライブハウスが営業しづらい時期、仙台MACANAの入り口に貼られていた応援メッセージ。「お顔は見えなくても、応援してくださる方がいるんだと励みになりました」と佐藤さん

≪配信ライブの動向≫

仙台のライブハウスの中でも、かなり早い段階で配信ライブ化に踏み切っている印象があります。最初の配信はどのようなものだったのでしょうか?

4月3日の「弾き語りイベント」の時です。元々、開演の1時間前まではお客様を入れてのライブの予定でした。しかし、直前に関東のライブハウスでコロナ感染者が出てしまったということで、「ちょっとやばいね」と。

一旦アーティストにも連絡して考えた結果、会場は無観客にして配信ライブに切り替えました。お客様には一人ずつ連絡して事情を話し、理解していただきました。
この時点ではまだ助成いただいていなかったので、方々からマイクなどの機材をかき集め、僕の自前のパソコンで半ば無理やり敢行しました。

4月25日「底なしの青」無観客ワンマンの時は、配信ライブをアナログ回線で配信したので、かなり荒い映像での配信でした。

配信に関わるセッティングや機材準備は、どのように進めましたか?

写真や映像を仕事にしている人のつながりを辿って手伝ってもらったり、関東圏でライブ配信している人に電話でやり方を聞いたりしてやっていました。

多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業の助成が決まったのが6月。そこから配信機材一式を揃えることができ、かなりパワーアップして、石ころから地球くらいクオリティに差が出ました(笑)!

機材は周囲にアドバイスをもらいながら選んでいきましたが、実際に触ってみないとわからないので悩みました。配信映像の画面を切り替えるスイッチャーも出回っておらず、オークションで元値より高いものだけという感じだったのですが、東京につてができて、1台だけ確保できるということで、送っていただきました。

みんなそうやって機材をかき集めていたんでしょうね。

震災の時もそうでしたが、周りに助けられました。10年前の震災当時、以前のMACANAが被災して今の場所に移転してきたのですが、その時もバンドマンの壁紙屋さんに内装をやってもらって。今回も、フリーランスの音響屋さんの上野君にもいろいろアドバイスもらいました。ライブハウス周りで全業種を賄えるんじゃないかな、くらいの感じです。

自身で配信ライブをしているアーティストもいます。ライブハウスから配信したいというニーズはありますか?

あります。ライブハウスでしか出せない雰囲気もあると思います。

東北を中心に活動しているシンガーソングライターの@なおポップ君も、機材は持っていて個人でも配信をしているようですが、MACANAでもやってくれました。

活動の場を失ったバンドマンも結構います。配信ライブにすることで、宮城県以外のファンにアプローチできるのは良いところですよね。

配信に関して、アーティストからの要望はどんなことでしょう?

カメラの配置などを含めて色々な要望があります。その都度一緒にディスカッションして、これが一番いいねっていうのに落ち着いています。会場のLEDライトは、映像上では色が飛んで白っぽく見えてしまうので、明かりの強さや顔に当たる角度を調整したりと、試行錯誤しました。

ライブの醍醐味は、アーティストにとってもお客さんにとってもお互いの掛け合い。無観客だとアーティストはやりづらいのでは?

やりづらいと思いますが、逆にそれをプラスにしているバンドもあります。やり方次第で楽しんでもらえるものになると思います。

会場での有観客ライブと配信ライブ、チケットの金額設定は変えていますか?

ライブによりますね。基本的には配信ライブの方が若干安くなっているケースが多いです。

アーカイブ視聴はどのように設定していますか?

有料配信ライブに関しては、基本約2週間は残しています。一方で、アーカイブを残さないライブももっとやっていきたいんです。巻き戻して観られないことで、特別感が出てくると思います。

従来、ライブ会場に来てくれているお客さんの人数と比較すると、視聴者数の動向はいかがでしょう。理論上、オンラインで視聴できる人数に上限はありません。

難しいですね。でもオンラインの方が少し減る傾向がある気がします。初めて有料配信をしたのが、ヴィジュアルバンド「Jin-Machine」のライブですが、約130人の視聴者がいました。現状、MACANAの会場に130人を入れることはできないので、そういう点ではありがたい人数ですね。

≪配信ライブの課題≫

有料配信のチケットを買ってもらう難しさはありますか?

あります。特別感のないものを毎回配信しても飽きますよね。それはリアルのライブにしても同じだと思いますが、やはり配信ライブにお金を払って観ていただくのは難しい課題でもあります。

アーティストの組み合わせ次第で「めっちゃ面白そうじゃん!」って思ってもらえるというのがあると思います。今はコロナ禍で地元のアーティスト同士のコラボに力をいれている状況です。ただ、コロナだからライブをやらないアーティストもいるので、組み合わせに悩む時がありますね。

配信ライブにおいて、工夫されているところはありますか?

通常、5〜6バンドが出るライブの尺は約3時間。ライブをひとつの番組として考えると、テレビで3時間の番組をずっと通しでちゃんと観るかって言われると、なかなか観ないですよね。会場でリアルに観るライブと、画面越しで観るライブの時間の感じ方は違うので、感染防止対策も含めて、バンドの出演数を最大4バンドくらいに減らし、少ないバンド数でも楽しめるようにしています。

オムニバス形式のライブは、それぞれのバンドの出演時間を減らしているということでしょうか。

そうですね。1バンドあたり25〜30分くらいに設定しています。好きなアーティストだけを観たりする方もいるかもしれませんし、洗濯しながらなど「ながら見」が合っているのかもしれませんね。

配信のトラブルについて伺います。映像に関するトラブルを教えてください。

MACANAの配信ライブは、YouTube live(無料配信)、ツイキャスでプレミア配信(有料配信)をしています。助成前の配信で、パソコンの充電が上手くされていなくて途中で電源が落ちてしまい、ツイキャスのプレミア配信がうまく配信されず、購入者への無料グループ配信になってしまったことがありました。

何とか配信データが残っていたので、プレミア配信チケットを買ってくれていた方々にメッセージを送って説明し、動画をYouTubeの限定公開でアップロードし直したということがありました。全部で約3時間のライブ、一晩中編集しました……。

バックアップは必須ですね……。

ツイキャスでは、映像配信ソフト「OBS」を使うんですが、サンプリングレートを合わせるんです。合わせなくてもできるんですが、どんどんずれる可能性があります。後ろの方になっていけばいくほど、口の動きと音声が合わなくなっていく。はじめ、それに気づかず配信していたことがありました。

音響系のトラブルを教えてください。

音響は最初から気を遣っている部分で、大きなトラブルはありません。

リハーサル時に限定公開にして一旦配信して音のチェックをするので、ノイズなど、その都度原因を調べて改善しています。音量のバランスも気にしています。

ライブの記録映像って音が割れていたりしますよね。音声と映像の組み合わせは難しい点なのではないでしょうか。

会場の音響と配信用の音響、分けて設定しています。つまり、配信で流している音と、会場のスピーカーから出している音を変えているということです。おっしゃる通り、会場の音をそのまま配信すると割れてしまったりするので、バンドサウンドと会場のエアーマイク(客席で聞こえている音)を混ぜて配信しています。

バンドとアコースティックでも変わりますね。

アコースティックだと音量が相当落ちてしまうのでその調整も重要ですね。
会場のセッティングでは、配線周りも重要です。配信機材やビデオカメラとステージに距離があり、電気供給が途中で弱くなってしまうからか、映像がスイッチャーまで届かないんです。電力を上げるブースターを挟んで調節したりもしました。

≪コロナ禍の取り組み≫

配信ライブの他に、コロナ禍での取り組みはどんなものがありますか?

コロナウィルスが収束したら会場に来てもらえるように、ドリンク代金前払いプロジェクト「SAVE THE LIVEHOUSE」というサービスを利用させて頂きました。これは、実際にお客さんにお会いした時にお礼を言えるのが良いですね。

現状、一番助かっているのは、仙台市の実演芸術の公演会場費助成です。アーティストなど、ライブを実施する側が申請することで、会場費の半額を市が負担してくれる助成制度です。これによって、地元のバンドがライブをやるハードルが下がりますし、会場側のMACANAとしても、「ライブやろうよ!」と声をかけやすくなりました。

MACANAのYouTubeチャンネルでは、マイクチェックの日常動画などもあり、ライブハウスならではで面白いですね。ライブに行く人にとっては見慣れた光景なので、会場にしばらく行けなくても疑似体験できる感じがあります。

幸い、YouTubeのアカウントは2010年くらいから作っていたので、動画のアップ自体はスムーズに実行に移せました。アイデア次第で別の動画も出していきたいです。僕は釣りが好きなので、そういう動画も面白いかな?(笑)

ライブ配信のハウツー動画もアップされています。

観たよっていう声もちらほらあります。「配信のやり方を教えてほしい」という方も何人かからご連絡いただきました。

≪ライブ配信との向き合い方≫

これからライブ配信する方へ、アドバイスはありますか?

「配信」プラスαを考えることで長く続けられると思います。僕らだったら、ライブがまず核としてあって、それに配信をプラスしている。

配信がメインなのではなくて、あくまで手段として使うということですね。

そうですね。単発でやる分には成功すると思いますが、毎回続けていくのは至難の技。番組制作というところで僕らは素人ですが、その中でもどうやったら楽しんでもらえるかというのは常に考えています。

機材や技術面ではいかがですか?

配信に関しては、映像スイッチャーは必須だと思います。カメラ1台でも配信自体は可能ですが、1つのアングルだけだと、観ている方が飽きてしまいます。今は、カメラはもちろん、スイッチャーひとつ取っても手頃な価格で高性能なものが色々出ているので、選択肢があると思います。

それからケーブルには気を遣った方が良いですね。ケーブル一つで映像の質が大きく変わります。

カメラやマイクはみなさん検討されると思いますが、ケーブルは意外と盲点かもしれませんね。

楽器初心者と一緒で、シールドとアンプを疎かにしている人がいると思うんですが、そこで音質が劣化している場合もあります。僕らもまだ完璧な形ではないですが、今後揃えていきたいです。

今後、配信ライブにどのように向き合っていきますか?

コロナ禍は大変なことが多いですが、良いこともあります。コロナ禍がなかったら、こんなに全国でライブ配信が進まなかった。これまでは、「配信の手段もあるけれど、やっぱり生だよね」っていう風潮が強かったので。

もちろん、今も会場での生ライブを観ていただきたい気持ちに変わりはありません。コロナウィルスが収束した直後から、また来場者数が増えるとは思えないので、そこからどうしていくかを一番考えていく必要があります。

アーティストに対しては、MACANAとしては「ライブをやってくれてありがとう」と思っています。だからこそ、生き残らなければいけないな、という意思は強いです。

外出が難しい状況が続く中、「昔よくライブハウスに行っていたので、ライブが久しぶりに観られて嬉しい」という声を聞けると、やってよかったなと思いますね。配信ライブで、新しいお客さんがついてくれたりもします。

初めてライブを観た方には、色々なアーティストを知ってほしいし、新しい音楽に出会ってほしい。「MACANAのライブ配信を観たい」って思ってもらえるものにしないといけないので、今後も試行錯誤しながらやっていきたいです。

掲載日 2021年03月26日 取材月 2021年01月

佐藤 岳史(さとう たけし)

仙台MACANA店長

企画・取材・構成 奥口文結(FOLK GLOCALWORKS)、濱田直樹(株式会社KUNK)

このインタビューは、「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」の助成事業実施者に文化芸術活動や新型コロナウイルス感染症の影響等について伺ったものです。

当日は、身体的距離確保やマスク着用などの新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、取材を行いました。写真撮影時には、マスクを外して撮影している場合があります。