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画家・浅野友理子インタビュー
絵で文化を紡ぐ

インタビュー後編

画家・浅野友理子さん

コロナ禍で、クリエイティブの表現や発信方法が多様化しています。
仙台を拠点に活動する画家の浅野友理子さんは、手で生み出す絵の質感の温かさはそのままに、オンラインならではの表現も広げています。後編は、画家としてのルーツを伺いました。

≪絵の原点、学生時代≫

多賀城に生まれた浅野さん。高校時代まで宮城県にいらっしゃいました。元々絵を描くことがお好きだったのでしょうか。

思い返せば、小学校の頃から絵を描くことは好きで、女の子や動物のイラストなどを休み時間に描いたりしていました。高校は多賀城高校の普通科で、美術部に所属していました。東北芸術工科大学進学で山形へ移り住み、卒業後を合わせて9年間を山形で過ごしました。仙台に帰ってきて4年が経ちます。

いつ頃から本格的に絵を描き始めましたか?

高校の美術部の時からですね。当時は絵の他に、高校生なりにインスタレーションのようなものを作っていました。何となく一番色々なことができるかなと思って、大学では油絵を学べる美術科に進みました。

将来は美術関係の仕事を見据えて美術科に進んだのでしょうか。

そうできたら良いなとは考えていましたが、ここまでやるとは思っていませんでしたね。

大学生活はいかがでしたか?

実は当時、美術よりもストリートダンスにはまっていて、ヒップホップを踊っていました。体力がついて、楽しくて健康的でした。今はもう踊れませんが(笑)。

ダンスの他にも、民族音楽や色々な土地のテキスタイル、その土地のものが描かれている工芸品など、文化的なものに興味があったので、その影響がずっと今も続いている感じですね。韓国、台湾、ラオスなど、旅にも行きました。アフリカのケニアでは、原色の衣装や面白い模様が印象に残っています。

大学の頃から今の作風でしょうか?

植物は描いていましたね。植物のフォルムや地域ごとの扱われ方などにずっと興味があります。そうして段々と、植物の調理のされ方や、それを使っている人など、植物を取り巻く周辺までを描くようになっていきました。トチノミは、学生の頃から私がずっと描いているモチーフなんですが、はじまりは、たまたま大学の敷地に落ちていた実を拾ったところから。そこから興味を持って、あく抜きの方法など調理の仕方を教えてもらったりする中でより興味が出てきて。今の作風や植物を描くようになったのは、山形にいた頃の影響が大きいですね。

実際に植物が生えているところを、その場でスケッチしますか?

その場でささっとスケッチする場合もありますが、写真に撮って、後で描くことも多いです。

興味があるものを見る時の視点はどうでしょう?「これ、自分も描きたいな」とか「この色の組み合わせいいな」とか思ったりしますか?

そうですね。興味があるものを自分の絵で立ち上げたいっていう気持ちになります。

≪アトリエでの制作風景≫

今回は、浅野さんのアトリエにお邪魔してお話を伺っています。小学校の教室1部屋分ほどの広さで、スペースの半分は、これまでの作品の保管場所。もう半分で、まさに作品づくりの最中ですね。

2021年3月末から4月25日まで、塩竈のギャラリー「ビルドスペース」で開催する個展「綯い交ぜ」の作品を描いているところです。

絵の具は何を使っているのですか?

油絵の具と日本画の水性顔料を使っています。最近は、メインに日本画の顔料、ポイントで油絵の具ですね。保存のことを考えると同じ画材で描くのが一番良いとは思うのですが、異素材が絵の中で混ざり合ったときの表情が気に入っていて、水と油を弾かせたりして描いています。

トーンが落ち着いた良い色ですね。日本画の顔料を使うのは、何かこだわりがあるのですか?

日本画の顔料は、植物や鉱物から作られているのが気に入っているんです。ただ、顔料の素材に固執するのではなく、最終的には絵で魅せたいと思っています。

ひとつの作品は、どれくらいで描きあげるのでしょうか。

ひとつの作品は、どれくらいで描きあげるのでしょうか。

≪絵を、動かしたい≫

浅野さんの描く植物は写実的とは違いますが、特徴を捉えた上で模様のように落とし込んでいる感じがします。葉っぱや花に躍動感があって踊っているみたい。動きがありますね。

色合いといい、自然な雰囲気なのですが、リズミカル。絵画って、キャンバスの中でどういう構図で描くかによって、対象がトリミングされる。植物が同じパターンでいくつも配置されていたり、敢えて見切れるようにかかれていたり、デザイン的でテキスタイルのようです。

そうかもしれませんね。今後、着物など、身に着けるものにも描いてみたいですね。

≪食文化とつながる≫

浅野さんは、作品づくりにおいて、描く対象の背景にある歴史やエピソードを大切にされています。色々な人に話を聞きに行くことに躊躇はありませんか?

わりと好きですね。集団の中に入って行くというよりは、一対一で対話するというか。相性が良かった人と繋がりができていく感じですね。

ものに対して感性を刺激されるお話は伺いましたが、人に対して影響を受けたことはありますか?

二人います。一人目は台湾出身で、今は九州在住の60代の女性の料理人です。自宅の庭で色々な植物を育てたり、国内外の様々な農園をまわられたりしていて、食材にとても詳しい方です。一緒に台湾へ行ったこともあります。彼女と歩いていると、様々な植物が目に入ってきてとても楽しかった記憶があります。
二人目は、東京の田園調布で「PATE屋」(https://pateya.com/)というパテの専門店を営んでいる林のり子さん。パテ作りの他にも、世界の食のしくみを土地ごとの気候や自然環境、歴史や文化から探る「〈食〉研究工房」を設立して活動されています。調べたものを、地図に起こして見やすく分類されたりしているのがとても魅力的で、面白い取り組みをしている方なんです。2017年に、東京のギャラリー「馬喰町ART+EAT」(現在は閉業)で個展を開いた時に、林さんが一緒にトークイベントをしてくださって。アートと食に造詣の深い方だったので嬉しかったですね。

浅野さんの作品に対して、お二人はどんな感想を持たれているんでしょうか?

二人とも私の活動に興味を持ってくれていて「各地でその土地のものを描いてほしい」と言ってくれました。前者の料理人の女性は「お店を出しなさい」とも言ってくれて。お店に私の絵を飾って、料理の技術を習得して、いろんな土地の料理を出す。夢が広がりますね。

コロナ禍でも、オンラインでワークショップをされたり、アニメーション作品を作られたりと、逆境をバネにして活動している印象があります。今後、やってみたいことはありますか?

直近だと、個展に集中したいですね。(個展「綯い交ぜ」<Yuriko Asano exhibition “Naimaze/mixture”> 3月27日~4月25日)その後は、アニメーションの新しい作品を作ろうと思っています。

掲載日 2021年04月23日 取材月 2021年01月

浅野 友理子(あさの ゆりこ)

1990年宮城県生まれ。2015年 東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程修了。食文化や植物の利用を切り口に様々な土地を訪ね、出会った人たちとのエピソードとともに、そこで受け継がれてきたものを記録するように描いている。

企画・取材・構成 奥口文結(FOLK GLOCALWORKS)、濱田直樹(株式会社KUNK)

このインタビューは、「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」の助成事業実施者に文化芸術活動や新型コロナウイルス感染症の影響等について伺ったものです。

当日は、身体的距離確保やマスク着用などの新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、取材を行いました。写真撮影時には、マスクを外して撮影している場合があります。