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作るモチベーションを高める場所へ
DIY STUDIO仙台

DIY STUDIO 企画・運営担当 岩本忠健さん

2020年3月、仙台市若林区荒井にオープンした「DIY STUDIO仙台」。緊急事態宣言下で開所することになった場所ですが、動画コンテンツ配信などを取り入れた活動を展開しています。DIY STUDIOの企画・運営担当 岩本忠健さんに、仙台のものづくり拠点としての構想を伺いました。

≪DIY STUDIOオープンの理由≫

2016年8月に、この場所でDIYに関する資材や雑貨を販売するショップがオープンしました。2020年に全面リニューアルして今の形になった施設ですが、リニューアルの経緯を教えてください。

DIY STUDIOは、工務店やハウスメーカーに資材を卸している和以美株式会社の施設です。事業主である和以美株式会社の本社は東京で、東日本だけでも営業所が70箇所以上ある会社です。

工務店などに建材を売るB to Bの会社なので、これまで個人のお客様に商品を売ったことがありませんでした。今後は新しい切り口として、個人のお客様に直接ものを売るということをやってみたい。そういうわけで2016年にオープンしたのが、DIY用の資材や雑貨を販売するショップでした。

元々、僕が和以美株式会社の取引先である、工務店やハウスメーカー向けのイベントでマルシェやワークショップの企画を担当していたこともあり、元々のオーダーも「この場所のコンテンツとしてマルシェを月1回の頻度でやってほしい」ということだったんです。でも、コンテンツを単発でやるのはもったいない。「それなら建物をちゃんと作り直して、DIYができるスペースを作りましょう」と提案したことがきっかけで、リニューアルすることになりました。

現在DIY STUDIOは、僕の運営する株式会社KAISが業務委託を受け、この施設の企画や運営を担っていて、僕と和以美株式会社の社員がスタッフとして常駐しています。

黄色いボックス型の建物は、通りからでも目を引きます。実際に中に入ると、予想以上に広々としていますね。

ショップ以外のスペースは、元々は資材置き場で、ホームセンター等に卸す資材をここから運んで卸していました。元々売っていた資材の在庫が結構あったので、それを使ってものづくりができる施設にしたいと考えました。

岩本さんは、これまでに工務店勤務と不動産業を経験されています。その経験から、今回の施設のリニューアルはどのように構想を立てていったのでしょうか。

一つ目は、空き家問題などがあることからわかる通り、新築の着工数が減ってきていること。工務店の仕事が減るということは、卸業も影響を受けます。
これまでは「もの」だけを売ってきたけれど、今後は「こと」も売っていきたい。「こと」は、工務店の販促支援です。工務店がイベントをする時に、ものづくりのワークショップをして、お客様に楽しんでもらうことが販促活動になる。DIY STUDIOがそんな場所になれたらいいよね、と。
僕らイベントを企画する側の提案は、例えば、貯金箱や組み立て式のスツールなどのセットを用意して来場者に作ってもらう。場合によっては僕らスタッフがレクチャーをする。そうすると、「こういうのもできる?」って、今後に繋がる声をいただけたりすると考えました。

二つ目は、今後、明らかに職人さん不足になっていくということ。職人不足をどう解消するか。極論を言うと、「できる人はできることをやればいいじゃないか」。
みんなが工具を使えるようになって、どんどんDIYをやっていけばいい。プロを育てるのは難しいけれど、工具を使って、些細な家のメンテナンスができるとか、そういうことだったら一緒に取り組むことができるのではないかと思ったんです。

≪一緒につくる、という姿勢≫

DIY STUDIOのホームページでは、具体的にどういったことができるか詳しく掲載されています。(https://diystudio.jp/service/)岩本さんをはじめスタッフの方々は、来た方々をどのようにガイドされているのでしょうか。

僕らは、「一緒に作りましょう」というスタンスで、上から教える立場ではありません。来た方の想いを汲み取り、ハードルを下げながら、ものづくりの第一歩を踏み出すきっかけをつくるということだけです。

作りたいものが明確な人にはやんわりと手順を伝えますが、こうしなければいけない、みたいなことは言いません。明らかに工具の使い方が危険な場合や、「その椅子の脚では立たないよね」とかであれば伝えますが、みなさんの豊かな発想が僕らも面白いと思っているところです。

どんな方がいらっしゃるのでしょうか。

年齢層も性別も本当に幅広いです。男性・女性問わずいらっしゃいますし、親子でいらっしゃる方も多いです。例えば、「タイヤのホイールを塗りたいのだけれど、マンション暮らしで難しい」という方がいらっしゃいました。もちろんうちでOKです。
「家のフローリングを貼りたい」と、ネットで買った床材を持って来た男性がいっしゃいました。その方は床に直接は貼れないタイプのものを購入されていて、両面テープで貼るしかないことをお伝えすると、それでも貼りたいということで、ここでカットしていきました。一緒にいらした奥様は、勝手に面倒なことをして……みたいな反応でしたが(笑)、最後にはお子さんと一緒に手を動かしながら手伝ってくれて。ものづくりっていいなって思いましたね。

DIY STUDIOには、一般のお客様からのリフォームの相談もあります。ただ、「DIY=自分がやるから安い」という訳ではないんです。僕らが入ることで高くなる部分もある。本当は、この工程はプロがやった方がいいというようなところもあります。でも、ここに来るお客さんは満足度を求めているんですね。「自分が床材を貼った」、「壁を塗った」ということに価値を見出している。だから、「コストがかかる場合もあるけれど、その代わり、ご自身で手を入れられる部分も増やせるし、満足度は高いですよ」と伝えています。

一般のお客様のお話をしましたが、工務店など、企業からの依頼もあります。手がけている仕事や事業は素晴らしいのに、企業自体の見せ方があまり得意ではないところもあります。ロゴ、ホームページ、パンフレットなど、企業の見せ方のブランディングを依頼された場合は、DIY STUDIOに併設しているシェアオフィスに入居しているデザイナーや映像クリエイターの方に力を貸してもらって解決していきます。

DIYというとトンカチする場所だよ、と思っている方が多いと思いますが、課題に合わせて、もう少し突っ込んだ幅広い提案ができるブレーンがいる、ということですね。

そうですね。ブレーンといえば、作家さんも大切なブレーンです。工具を使えるようになると、発想やできることに広がりが出てきます。DIY STUDIOには、シルクスクリーンができる機械やカッティングマシーン、デジタル系機器まで一通り揃ってはいます。ただ、ある一定の技術を身につけた後にもう一段階上に行くと、ここは用無しになる。その先の場所として案内しているのが、作家さんや、仙台のより専門性の高い施設「FabLab SENDAI FLAT」、「analog」、宮城県美術館の創作室などです。そういった他の施設との関係性ができているので、来た方をそちらに案内しやすい。逆に、他の施設に初心者の方が来たら、僕らに振ってくださいって言える。そういうプロ集団のブレーンがいるので安心しています。

DIY STUDIOは町医者のようですね。「紹介状を書いてあげるから、◯◯病院に行ってね」みたいに。

まさにそうなんです。とりあえずDIY STUDIOに行ったら相談に乗ってくれる。そう思ってもらえる場所にしたいんです。

≪コロナ禍のオープン、当時の状況≫

ちょうど2020年の緊急事態宣言が出た時期がリニューアルオープンでした。その時の状況はいかがでしたか?

オープンしたことはしたのですが、準備が何も間に合っていなかった。もちろん不安はありましたが、いきなりたくさんの方に来ていただいても対応しきれなかったので、時間が作れたのは正直良かったかな、と振り返って思います。現在も、人が集中するということはないのですが、必ず誰かが何かを作りにきている状況です。コロナ禍がきっかけで意欲が顕在化したのかもしれませんが、みんな何かを作りたいのかな、と感じます。

YouTubeチャンネルでは、ものづくりに関した動画を配信しています。

工具に関する問い合わせがとても多いんです。僕らとしては、使い方を知らずに使われるのが一番困ります。DIYで盛り上がっているのはいいけれど、けがが増えてしまったら元も子もない。まずは安全面だけでも伝える方法がないかと思い、多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」の助成を受けて作ったのが配信している動画です。撮影と編集は村田怜央さんに協力していただきました。
本来であれば直接教えたい。でも施設に来られない状況なら、動画でもいいから教えたい。少なからず、知っている施設の顔が見える人が教えているという安心感はあるのかなと思っています。最終的に、コロナが収束してここに来てくれるきっかけになってくれたらいいなって。

動画でも、作家の方々が出演されています。

施設の期待値を高めるためにも、色々な方に関わっていただいている面を見せたいと思いました。今後も、作家さんシリーズは増やしていきたいですね。

≪地域のものづくり拠点へ≫

DIY STUDIOとして、今後取り組みたいことはどんなことでしょうか。

地域と一緒にできることは増やしていきたいです。現在も、小学校の校外学習として小学生たちがDIY STUDIOに来てくれたり、新しく開校した荒井小学校の校歌のレリーフをここで作ったりしています。DIY STUDIOで一番やりたいのは、子ども向けのプログラム。今、コロナウィルスの影響で休校の期間が出て学習時間が削られているので、ものづくりや校外学習が削られてしまっています。ここには工具も端材もたくさんあるので、ワークショップなどを通して子どもたちの秘密基地のような場所になったらいいなと思いますね。

地域のものづくりの拠点として、育っていくと良いですね。

そうですね。オープン当初から無料相談を受け付けていて、「何かあったら連絡ください」と言い続けています。ものづくりのモチベーションが高い人はすごいんです。「○○を作りたいんですが、今、百円ショップにいます。何を買っていけばいいですか?」とお電話をいただき、「今日、いらっしゃるんですか?」と尋ねると、「はい、今日です」と即答する、そんな方もいます。そういうオーダーもできるだけ断らずに受け入れたい。作りたいというモチベーションを壊したくないんです。DIY STUDIOのスタッフに、美大出身者は誰もいません。ごく普通のスタッフ達です。足りない部分は外やブレーンに協力してもらう。そうして、ものづくりの土壌をつくる。そういう柔軟さが良いところなのかなと思っています。

掲載日 2021年07月13日 取材月 2021年02月

岩本 忠健(いわもと ただよし)

株式会社KAIS 代表取締役

企画・取材・構成 奥口文結(FOLK GLOCALWORKS)、濱田直樹(株式会社KUNK)

このインタビューは、「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」の助成事業実施者に文化芸術活動や新型コロナウイルス感染症の影響等について伺ったものです。

当日は、身体的距離確保やマスク着用などの新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、取材を行いました。写真撮影時には、マスクを外して撮影している場合があります。