2022年度「文化芸術の創造・発信・普及助成事業」について、180件の申請をいただきました。
審査は募集案内に記載した「審査の視点」に基づいて行われました。審査委員による申請書類の事前審査の後、審査委員会において、評価点が高い事業から事業目的・内容・収支予算等を鑑みて採択事業と採択額を議論し、下記のとおり決定しました。
・申請数 180件
・採択数 55件
・採択率 30.6%
・助成総額 18,000,000円
・採択事業 一覧(PDF)
※A事業「(2)仙台市の魅力向上に資する中・大規模事業」は、申請数が少なく、今回の審査委員会においては、採択と認められる事業はありませんでした。
・最高額 500,000円
・中間助成額* 300,000円
・最低額 100,000円
・平均助成額 327,273円
・最多件数助成額 500,000円
*中間助成額…全助成額の中の中央値
會田 瑞樹 (打楽器/ヴィブラフォン奏者、作曲家)
鈴木 佳子 (東北福祉大学・鉄道交流ステーション学芸員)
萩原 宏紀 (いわき芸術文化交流館アリオス 企画制作課)
松村 翔子 (仙台市市民活動サポートセンター 副センター長)
山内 宏泰 (リアス・アーク美術館 館長)
(五十音順)
(1) 文化事業としての質
創造性/発信性/公益性が認められ、質の高い効果が期待できる事業であるか。
(2) 将来性・発展性
申請者の今後の活躍や事業の発展が期待できるか。
(3) 実現可能性
企画内容が具体的かつ、その企画内容、実施体制、スケジュール、予算計画等が実施のために適切なものとなっているか。収支予算の積算が妥当か。
(4) 助成の必要性
助成金を必要とする理由が具体的かつ明確であるか。
※「審査の視点」の詳細は、募集要項の5ページ「14.審査の視点」をご覧ください。
・2022年度募集要項(PDF)
※審査委員が申請のあった事業の内容と利害関係がある場合は、審査委員会において、当該申請事業にかかる採択可否や助成金額等の審議に加わることができないと要綱で定めております。なお、利害関係の範囲は、次に掲げるものとしています。
(1)審査委員が、申請団体に所属している場合
(2)申請事業に、何らかの形で審査委員自身が参画する場合
(3)審査委員が、申請者から謝金・給与等の報酬を得ている場合
(4)審査委員が、申請者に対して外部有識者として関与するなど、中立・公正に審査を行うことが難しいと自ら判断する場合
各「審査の視点」において、次のような要素が認められる事業は特に高く評価されました。
(1)文化事業としての質
・作品選定や内容が独創的、挑戦的であるもの
・社会性を踏まえた企画・作品制作となっているもの
(2)将来性・発展性
・若手、次世代の育成のための工夫があるもの
(3)実現可能性
・過去に行った類似事業の実績や、現在の事業の進行状況について具体的に記載されているもの
(4)助成の必要性
・助成金で主に充填したい経費の内容とその理由を明確に示すことができているもの
「A. 仙台市内の個人・団体が主催する事業」として申請された事業の中では、仙台の文化芸術の特色や課題をとらえ、それに向き合い乗り越えようとする事業が特に高く評価されました。例えば、作品の作り手や文化芸術事業の担い手に対する活動・発表の機会創出や人材育成に寄与する事業、仙台の文化芸術の歴史や社会的な事象(震災や感染症を含む)を取り扱う事業、地域のまちづくりに寄与することを目指す事業等は、助成の必要性が高いと審議されました。
「B. 仙台市外の個人・団体が主催し仙台市内で実施する、優れた文化芸術の鑑賞機会を提供する事業」に申請された事業の中では、仙台市内の表現者との共同制作や発表機会の創出がなされる事業、仙台で申請事業を実施する文脈や必要性が説明できている事業等が高く評価され、採択となりました。
今回の申請書からは、文化芸術活動に対する新型コロナウイルス感染症による深刻な影響が改めて見えてきました。集客数が以前の水準まで十分に回復していないこと、若手育成の機会減少や担い手の経験不足が生じていること、団体や施設の運営において経済的な負担が積み重なっていること等、コロナ禍による直接的なダメージに留まらず、それが長期化することで各所に新たな課題を生じさせていることが読み取れました。
こうした状況において、コロナ禍をきっかけに生まれた新たな表現方法の更なる展開を目指す事業は高く評価されました。一方で、令和2・3年度「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」等の申請で多く見られた、代替的な事業形態等を提案する事業(オンライン配信や音源・映像配信等)は、今回の創造発信助成における採択数は少なくなりました。
審査委員会では、事業の企画意図・作品の内容(作品や出演者等の選定意図を含む)・表現者の問題意識等が、第三者が読んだ時に伝わるように、より具体的に申請書に記述される必要があるとの指摘がありました。
その結果、申請する事業について、審査に必要な情報が十分に記載されていないものは相対的に評価が低くなりました。
また、公的な助成金を受けるためには、事業実施の理由や動機が単に申請者の興味関心に留まることなく、鑑賞者・ジャンル・近隣地域等、外部にどのような影響を与えると想定されるか検討を重ねて事業提案することが求められます。
文化芸術や表現活動が有する公益性、または表現者が日々の活動を行うなかで意識している社会性を認識したうえで、申請事業に対する助成金の必要性について申請書を通して説明できているかどうかが、採択の可否を分ける重要な観点になりました。
異なる申請者に関わらず、類似した事業内容で、かつ、同じ出演者が重なる申請が少数ではありますが見受けられました。このような申請は、相対的に評価は低くなりました。
(参考)
・新型コロナウイルス感染症に関する文化芸術関係者等に対する支援情報のご案内(リンク)